鹿鳴館サロン
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官能文学辞典

序 文


 サロンはブームとなったSMビジネスに対するアンチとして作られた。どうしてなのか。それはサロンが作られた頃より、SMはどうしてだか健全な男女の愛の営みのひとつとなっていたからなのだ。鹿鳴館はそうしたSMが嫌いだった。
  ハプバもSMパブも緊縛講習会だとかいう集いも、どれもこれも安全第一、健全な男女の集いを目指していた。
  そんなものがSMだったのだろうか。
  もちろん、そうした平和でほのぼのとしたSMもあってもいいのだろう。それを否定するものではない。しかし、そうしたカラオケサークルとか社交ダンスと同種の意味における健全なSMから落ちこぼれるマニアは少なくないはずだった。
  実際、筆者もMの安全な快楽のためのSMというものに辟易としていた。M女たちの人気者になりたい、M女たちから先生と慕われ、奥田さんに縛ら れると感じちゃうんです、と、言われたい。言われたいが、そう言われたら自分の性欲が満たされるのかというとそうでもないのだった。筆者の変態はそうした 平和な愛と異質なところにあるから変態なのだ。
  筆者と同じような、そんなマニアたちが集まれる場所があってもいいはずだった。
  鹿鳴館はワイセツではないかもしれない。しかし、もし、犯罪を助長するもの、犯罪を誘発するもの、と、そうしたもので規制されるとするならこれ は規制対象になるのだろう。そして、鹿鳴館はそうありたかったのだ。ワイセツなどという下世話なものは、他のところに任せて、鹿鳴館はもっと危険な思想的 な弾圧を受けたかったのだ。
  そして、その怪しいイメージの遊びは、どんな具体的なワイセツ、たとえば、全裸の女が縛られて吊られるというようなワイセツ以上に刺激的なはずだという思いが鹿鳴館にはあったのだ。

  何故なら、鹿鳴館サロンのテーマは「閉ざされた窓の写真は開かれた女の股の写真よりも性を刺激する」というものだったからだ。

 



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