【春川ナミオ】
  性的にもっとも素直だった画家。
  たいていの芸術家は性的表現をしようとすると、次の二つの極端に走る。 ひとつは、わざわざ絵や文章や写真にしてもらっても意味のないような、ありふれた題材をありふれた表現方法で作品化したもの。
「彼女の手首を腰紐で縛ってセックスしたら、彼女の濡れ具合がいつも以上に激しかった」と、いうようなもの。行為も聞き飽きたものなら、その表現方法も読み飽きたもの。
  もうひとつは、意味が分からないもの。
「熟した果実が部屋中に敷きつめられた。あたかも高級娼婦が髪を撫でたような悦楽の境地がそこに見えた」と、いうようなもの。何故、果実なのか、娼婦なのか、髪なのか分からない。
  春川ナミオは、そうした極端と極端の中央に立ち、

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もっとも素直に願望を紙の上で現実化した。この人がいなければ、日本の官能世界は今なお、お粗末なものであり続けたことだろう。

 
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