【消し】
  かつての日本のエロ雑誌作りには、この「消し」が欠かせないものであった。エロ雑誌だけでなく、ポルノ映画や初期のアダルトビデオにも、この「消し」は存在した。何を消していたのかと言えば、欲望である。消す側はこの欲望をギリギリまで隠し、見る側は絶対に透けるはずのない「消し」の向こう側を想像したものである。欲望の正体はいまだ不明である。しかし、近年はこの「消し」に変わって「モザイク」というものが出現することとなった。これは欲望を不鮮明にするためのもので、欲望を消すためのものではない。かくして欲望は夢や憧れから、欲求不満に格下げされたのである。




 

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【下品】
  アブノーマルにも上品なアブノーマルと下品なアブノーマルがある。犬のセックスは下品だが、犬とのセックスは上品なのだ。カエルを殺して遊ぶのは下品だが、カエルを挿入するのは上品なのだ。自分をアブノーマルだと公言するのは下品だが、アブノーマルかもしれないと悩むのは上品なのだ。こんな嘘を信じるのも下品だが、こんな嘘を書くのはもっと下品だ。





 
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