—む—

【無意識】
　 変態世界における無意識は、トランプにおけるジョーカーの役目をする。
　 たとえば「君はかなりＭだと思うな」と、言い当てる。はずれたらすかさず「でも、無意識ではＭなのだと思う。それを理性が邪魔して意識の上ではＳになっているだけなんだ」と、言う。
　 その他「無意識では感じていた」「無意識に興奮していた」「無意識に鞭を求めていた」「無意識に意識していた」などと使用する。
　 官能小説では、登場人物の設定に矛盾してしまったら「すべては無意識の世界で想像していたことだった」と、書いてしまう。そう書きさえすればＳ男がオシッコを飲みたいと望んでも、Ｍ女が積極的にセックスをリードしても、犬好きが猫を抱いても、馬がフォークダンスしても、いっさい矛盾しなくなるのだ。
　 そして、私はこの辞典を無意識に書いている。