【ヌーディストnaturist】
  人間の性を太陽の下に晒そうとする危険思想の持ち主。
  人間とは異性(ときには同性、ときどき自分)の裸に対し常に邪なる感情を抱く唯一の動物である。
  裸は犯罪を助長し、性欲だけでなく、金欲や独占欲や破滅欲までをも煽ってくれるものなのだ。
  欲にまみれて人間はやっと邪悪なるものとして健全に生きることができるのである。ヌーディストは、その人間が健全に生きる根本の裸からワイセツさを失わせてしまおうとしているのだ。これは危険思想である。
  裸は犯罪を助長するために、日常的には隠され守られていなければならない。そうしないとせっかくの犯罪がおままごとになってしまうのだから。

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【ヌミノーゼnuminose】
  拘束は自由を奪う代わりに、忘我の安堵を与えるという。それはつまり、母親の胸に抱かれて外出した赤ちゃんのときに記憶したところのものと同様の安堵なのだ。
  Mがしばしば我を見失い、Sにそのすべてを捧げようとするのは、この境地にあるからなのだ。小さな宗教と小さな信仰がそこに生まれる。
  麻縄で縛られ、まったく、そう、指すらも自由に動かせないような状態のMがSに抱く一瞬の感情、これをヌミノーゼという。
  官能小説なら、Mの感情を大袈裟に表現するときに使用する。
  誘拐され、陵辱のかぎりを尽くされたMには、Sだけが自分の神に思えた。いや、そう思うしかなかったのだ。ヌミノーゼの優越性がMに絶望ではなく、悦楽を与えてしまったのに違いない。
  と、このように使用する。

 
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