【白雪姫症候群】
「白雪姫症候群」のM女には、まだ、自分は目醒めていないという意識がある。目醒めていないのは、性的な部分だけではない。もちろん、性的な部分も目醒めていないと考えているが、もっと、いろいろな面で自分はまだ目醒めていないのだと考えているのだ。女として、人間として、才能ある何者かとして、恋人として、とにかく、自分はまだ目醒めていないのだと考えているのである。しかも、何か魔法のようなもので目醒めることを妨害されているのだとも考えている。
  しばしば、M女がSを自分を目醒めさせる王子様だと考えるのは、このためである。
  Sが自分の眠っていた快楽を目醒めさせてくれれば、魔法がとけ、自分のあらゆる才能も目醒めるのだと考えている。これがM女に多く見られる「白雪姫症候群」なのである。もちろん、この症状はM女にかぎられたことではない。いや、女性にかぎられたことでもない。

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【新宿駅東口】
  多くのマニア雑誌はこの街で作られた。マニア雑誌が盛況だった頃、各マニア雑誌の編集者は、弱小大手にかかわらず、一日のはじまりをこの街で過ごしたものだ。マニア雑誌編集者たちの合言葉は「九時白十字」「十時ジュラク」「九時マディソン」というものだった。皆、新宿駅東口の喫茶店だ。ここにアダルトのモデルがやって来る。モデルプロダクションもやって来る。そして、AVとアダルト出版関係者もやって来る。朝の九時か十時にここで待ち合わせをして、モデルを連れてロケ現場やラブホテルに行くのだ。撮影がなければ、次の撮影のためのモデル捜しをここで行う。そうしてマニア雑誌編集者の一日は、はじまることになるのだ。
  ゆえに、多くのマニア雑誌は新宿で作られた、と言ってもいいのだ。この街がなければ、あそこまでマニア雑誌は隆盛を極めなかったかもしれないのだから。

 
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