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【歯】
  たいていの母親は母乳に含まれる栄養で十分だと考えている。しかし、乳児によっては、その栄養が不足していると感じていることがある。それは、母乳には精神的栄養が含まれていないからなのである。
  しかし、乳児には、それに対抗する手段がない。その手段を持つのは、歯という武器を得たときなのだ。これによって乳児は不足した栄養を補おうとする。そして、実際に肉体的栄養は歯によって補うことができる。食べることが可能になるからだ。
  問題は精神的栄養の不足だ。これを補うには、愛する相手を噛み、その血肉を体内に採り入れなければならない。
  母親から得られるはずだった精神的栄養を歯という武器を用いて別の個体から得ようというわけだ。
  歯は愛情獲得の最初の武器である。

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【背徳】
  目の前にあった禁断果実を口にすること。または、禁断の果実を探す行為のこと。
  この行為が背徳と呼ばれるのは、この世のものとも思えない美味を独り占めにしたいという人間の強欲によるものである。それゆえに禁断の果実は毒だと思われていたりもする。すべては美味独占のために誰れかが仕組んだ罠なのである。
  官能小説では「女教師のスカートが風にひるがえると、ツーンとした背徳の匂いがあたりに漂った」と、いうように使用する。

 
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