【ルーツ】
  マゾヒストたちが、常に探し求め、そして、絶対に見つからないのが自分のルーツである。しかし、それが見つからないかぎり、マゾヒストは許されることがなく、生涯、罰を受け続けることになる。何故なら、マゾヒストたちは、自分のルーツが分からず、そのために、自分を許すべき相手さえ間違えているのだ。
  マゾヒストを許すのも罰するのも、サディストではない。しかし、このことに気付くことはマゾヒストにはできない。それができたらマゾヒストではなくなるからだ。

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【ルポルタージュReportage】
  すべての官能文学の基本はルポルタージュである。絵空事で書かれた官能小説ほどつまらないものはない。だからといって、ある個人の体験手記のような官能小説は一人の書き手のものを一話読まされれば十分である。
  面白いのは、多くの体験者たちを取材し、多くの体験者たちに代わって書かれた小説なのだ。したがって、官能文学の底流にはルポルタージュがなければならないのだ。取材の下手な作家の書くものは面白くない。作家というものは話し上手で聞き上手なのものなのである。

 
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