-->
鹿鳴館サロン
鹿鳴館について コンセプト 初めていらっしゃる方へ system イベントカレンダー イベント報告 サロン日報 トップページへ

SM小説

鹿鳴館

 



アナルマニアの女

 ノートワープロを開く。サロンにはPCもあるのだが、やはり、小説を書くのはノートワープロがいいのだ。しかも液晶はカラーではない。そこがいいのだ。小説を書くときには、目に入ってくる情報量が少ないほうがいいからだ。
  さて、書き始めようとすると、アナさんが来た。アナルマニアの初老の紳士だ。彼はアナルの話し以外はほとんど話さない。それ以外の話しでサロンが盛り上がっている間は、静かなほほ笑みを浮かべて皆の話しを聞いているだけなのだ。しかし、アナルの話しになると突如として饒舌になる。そして、少しばかり熱がこもると、そのことを反省するように、また、物静かになる。
「今夜は暇だと思って、小説でも書こうかと思ったのですよ」
「そうですか、どうぞ、私はひとりで飲んでますから、執筆してくださいよ。そうした人の横で飲むというのもいいものかもしれません。そんな機会もなかなかないでしょうしね。どうぞどうぞ」
  まさかそんなわけにもいかない。それに、隣にいるのが知っている人では、昼間のファーストフードでも小説を書く私でも、さすがに集中できるはずもなかった。
「そうそう、アナさんにお勧めのいいビデオが入ったんですよ。アナルだけのビデオなんですよ。しかも何人もの女の子のアナルを並べて比較するというマニアックさで」
  そんな話しをしているところに電話が入った。サロンにはじめて来る女性からだった。
  彼女を迎えて、まずは驚いた。可愛いのだ。それも、アイドルなみの可愛さなのだ。そんな女の子がどうして一人でサロンを訪れたのか私には分からなかった。
  彼女がブーツを脱ぐのに手間取っている間に、三上さんが来た。覗きマニアの三上さんである。三上さんは玄関で彼女を見て一瞬、動きを止めた。彼女はそれほどの美人なのだった。三上さんは、彼女と私の顔を交互に見た。そして、彼女に促されるままに先に中に入った。振り返って、チラっと彼女の下半身を見たが、残念ながらミニスカートではなく、パンツだった。実は彼の前に私もその部分を見たのだ。そして、スカートでないことにガッカリさせられたばかりだった。覗きマニアの三上さんがそこを見たいはずもなかった。
  ようやくブーツを脱ぎ終えた女性を奥の部屋に案内すると、三上さんの声が聞こえて来た。
「こうやって、あからさまに尻の穴を見せられるというのは、私はだめなんですよね。やっぱり、お尻の穴っていうのは、こっそり覗きたいものですからね」
  そう言って私たちのほうを見た。
「すみません。いきなり、こんな話しで」
  私はすぐさま「いえ、そんな話しをするサロンですから」と、三上さんをかばうような言い方をして彼女を見た。
  彼女も「私もマニアですから、だいじょうぶです」と、言いながら、ハーフコートを脱いで自らハンガーに掛けた。サロンを訪れる人は、たいていそうするのだが、はじめて来て、それをするのは珍しかった。
「執事さんの小説で読んだままの場所ですね。そして、これが水晶のアナルバイブですね」
  テーブルの中にあるバイブを手にして彼女は言った。そこにやって来たのが道さんだった。
  彼の口癖は「SMは道ですよ。柔道、書道、華道、SM道です」というものだった。しかし、本人がプレイをしている様子はなく、おそらくは妄想派と思われた。妄想派ほど、SMとは何か、という問題にこだわるものなのだ。
  それをよく知っている三上さんは、彼をからかうように「そうだ、道さんの縛りを見せてくださいよ。いつも、縛りは美学だ、と言っているじゃないですか、その技を見せてくださいよ」と、言った。
  そうは言っても、女性が縛られることに応じるはずがない、そう思って落ち着いていた道さんは彼女から意外な言葉を聞くことになった。
「そんな素敵な縛りを体験させていただけるのかしら」
  そのままでは、三上さんと道さんが争うことになると思い、私は「久しぶりに私も縛ってみたくなりました。今日はお客さんも少ないので、いいチャンスですから、私に縛らせてもらえませんか」と、口を挟んだ。
「おお、執事の縛りが見られるというのは、今日は無理して来た甲斐がありました」
  さっそく道さんが言う。そうなれば三上さんも逆らうことができない。もちろん、以前から私の縛りを見たがっていたアナさんが賛同しないはずもなかった。
「洋服が汚れたり皺になるといけないので、脱げるところまででいいから、脱いでもらえますか」
「せっかくなら、全裸でいいです。下着が汚れていたりしたら、かえって恥ずかしいので、全裸のほうが私はいいです。皆さんにはお見苦しいかもしれませんが」
  そう言うと、彼女は部屋の片隅で、着ているものを脱ぎはじめた。その間に、M女の千尋さんが来た。彼女は自分も縛られたかったと言いながら、虚ろに縛られる女の姿を見つめていた。
「女の子の前でも平気なんですか」
  私は縛りながら、彼女の耳もとでそう囁いた。そこにいた人たちの誰れにも聞こえないようにだ。縛りながら耳元で身体の様子を聞くのは、イベントや撮影での縛りが多かった者たちの癖なのだ。M女の耳を唇で愛撫するかのように見せかけて、相手の様子を探るのだ。
「はい」
  と、彼女は小さく首を振った。
「それでは、女性がもっとも恥ずかしい胡座逆さ縛りをしましょうか」
  後ろ手にきつく縄をかけ、その上で、胡座に縛り、その身体をころがした。彼女の秘められた部分が天井を向く。厚いラビアと、その下のピンクのつぼみが晒された。ピンクのつぼみは、恥ずかしいからか、ヒクヒクと息づいている。
  私は彼女がかなりハードなM女であると感じていた。無理な姿勢に慣れているようだったからだ。そうした経験が豊富でなければ、ころがされたときに顔を歪めるし、抵抗を示すものなのだ。
  ところが彼女はしばらくその姿勢にしておくと、小さなつぼみの口の広げたのだ。これは、その姿勢でかなりリラックスしなければ無理な状態なのである。
「すごーい、お尻の穴が広がった」
  千尋さんはそこまでのM女ではないのだろう。口を開けた肛門が珍しいようで、席を立って女のそばに来た。三上さんも道さんもそばに来た。もちろん、もっとも興味を示したのはアナルマニアのアナさんであった。全員で覗きこめば、当然、つぼみは閉じてしまうが、しばらく見ているとまた開くのだ。
「これなら、あの水晶のアナル棒も入るんじゃないですか」
  アナさんは、つぼみのさらに奥が見たいのだろう、熱心にアナル棒の挿入を勧める。
「いや、せっかく、美しい羞恥がそこにあるのですから、ここは、もう少し、じっくり眺めましょうよ。それがSMというものですよ。ねえ、執事」
  道さんはそう言ったが、私もアナル責めのマニアである。チャンスがあればやはり、つぼみに物を挿れたいほうなのだ。
「でも、私も、この透明の美しい棒が挿入されたアナルが見てみたい」
  千尋さんがそう言いながら、アナル拡張棒を持って来た。それも、二番目に太い物をだ。こうしたときには、M女のほうが残酷なものなのだ。
「分かりました。これも実験です。挿入してみましょう。でも、そのためには、千尋さんが彼女のお尻の穴を舐めるんですよ。シャワーさえ浴びてない、この穴を」
  千尋さんはとっくにMモードのスイッチが入ってしまっている。洗っていないその部分を舐めるぐらいは躊躇がない。むしろ抵抗したのは、縛られころがされた女性のほうだった。
「だめです。そんな汚いところ、申し訳けないです。千尋さんが可哀相です」
  形ばかりの抵抗である。本音が同性の舌を羞恥のかたまりである部分に感じてみたいところにあることは、分かりやすいほど、よく分かった。何しろ、千尋さんがその部分に顔を近づけると、すでに、ギラギラとその部分は潤っていたのだから。
「恥ずかしい」
  嗚咽を漏らすように彼女は言った。千尋さんの舌はつぼみを割って、その奥へと挿入させた。私はその千尋さんの唾液で濡れたつぼみに指を挿入した。痛がる様子はない。指二本は難なく入った。中は熱く、そして、柔らかかった。
「行きますよ」
  アナル拡張棒がその狭い穴を押し分けて挿入された。少し挿入すると、後は自分の重みで中へと入っていく。
「すごーい」
  ため息を漏らしたのは千尋さんだった。水晶には、ピンクの内蔵が映りこんでいる。
「オナニーしてもいいですかねえ」
  たまらなくなったのか三上さんはすでにペニスを取り出していた。
「大きい、私、三上さんのって初めて見た」
  千尋さんが驚いたのも無理がない。三上さんのモノは長く太いのだ。
「そんな、それは無理です。あの、私、お尻の経験はないんです。いきなりその大きさでは」
  女性はアナルセックスされるものと思いこんでいたようだった。いや、アナルセックスをねだったのかもしれない。
「ああ、それじゃあ、私も無理だなあ」
  そう言って、パンツを脱いだ道さんのモノも十分に大きくなっていた。そして、その大きさは三上さんといい勝負だった。
「ここは執事かな」
  私のモノの小さいことは有名だった。
「あの、このお尻のとこだけ写メ撮ってもいいですか、すごくアップで撮りますから」
  アナさんは人前では、絶対にパンツは脱がないと言っているので、セックスは無理なのだろう。アナさんを除く三人の男たちが誰れがつぼみに自分のモノを挿入するかの相談をしている間に、千尋さんは彼女の耳もとで、何やら別な交渉をしていたらしい。
「ローラちゃんに送ってあげたいんです。このアナル棒を挿れることに、ずっと興味を持っていたから、入ったところを見せたいの」
  彼女は自分のつぼみを撮られることを承諾したらしい。千尋さんは嬉々としてつぼみに携帯電話のカメラを向けた。
「あのう、もう、苦しいんです。そろそろ、解放してください。首がきつくて、耐えられそうにないんです」
  お尻よりも首が辛くなるのは、この縛りの欠点なのだ。それと知って、あまりエキサイトしなくてもいいように、あえて私はその縛りを選ぶのだ。
  二人の男はモノを出したまま、やや、がっかりした様子だったが、それもまたサロンではありがちな光景だった。
「やはりお尻を責めるというのはいいものですよねえ。お尻こそが女の象徴ですからね」
  三上さんは解かれていく女性の縄を眺めながら、勃起したモノを擦っていた。
「手伝いましょうか」
  その様子を見て女性が言った。
「えっ、そんなこと、いいんですか」
「だって、私を見て興奮してしまったのですから、それは私の責任ですし、自分の姿に興奮していただけるというのは、女にとっては嬉しいものですから」
  二人のやり取りを聞いていた道さんも、あわてて口を挟んだ。
「それでこそM女ですよね。そうした道の分かったM女というのは、少なくなりました。素晴らしい女性です。感動します」
「ただし、手だけですよ。口は使いません。それでもいいですか」
「もちろんですよ」
  二人は同時に叫んだ。
  私と千尋さんは散らばった縄を集め、それをほどき、まとめながら、二人の射精を待った。アナさんはアナルが見えなくなって興味を失ったのか、再びビデオを観はじめた。
「私も縛られたくなったなあ」
「チャンスがあれば、いつでも」
  二人も縛る体力はすでに私には残っていなかった。
「ところで、彼女は何という名前なの」
  縄をまとめながら千尋さんが私に尋ねた。
  私は知らなかった。そういえば、名前も聞かないまま全裸にして、縛っていたのだ。
  女性は二人を射精させると、自分の洋服を下着ごと抱えてバスルームに向かった。私は全裸の彼女にシャワーの使い方を教えて、部屋にもどった。部屋では彼女が何ものなのかという話しをヒソヒソと囁き合っていた。
  サロンに女性が一人で来るというのも珍しければ、いきなりプレイをするというのも珍しかった。私自身も彼女のことが気になった。
  しかし、彼女は何かに満足してしまったのか、シャワーを浴びてからは、妙によそよそしかった。バスルームから出て来ると、ソファーに腰を降ろすこともないまま、コートを羽織った。
  玄関で私は「ところで、あなたのお名前は、もちろん、偽名でも、ハンドルネームでもいいんですが」と、尋ねてみた。
  彼女は玄関の戸を開け振り返り「もうとっくに分かっていると思った。私の名前は二文字だから、ネットで探してみて」と、言った。そして、小さく手を振った。さよならと言う意味だ。
  私は、彼女がネットにはいないような気がしたし、サロンにも二度と来ないのではないだろうかと思った。根拠はない。そんな予感がしたのである。
「名前、聞きました」
  待っていたように三上さんが言った。
「いえ、教えてもらえませんでした。もちろん、私には、分かっていましたけどね。彼女の名前は」




鹿鳴館出版局

     

 


官能文学辞典
プレゼント文庫

鹿鳴館宣言

妖怪変態論

緊縛図鑑

性異常事例辞典
書評

文章実験室課題

風景違い

小説「窓」

感想会私的書評

感想会私的書評

鹿鳴館の歴史