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鹿鳴館の歴史




創世記 その2


 筆者は退屈していた。エロビデオの製作販売会社をつぶし、風俗店もつぶし、そして、エロ出版社での仕事に専念しつつ、やはり退屈しきっていたのだ。ビデオだから面白くない。風俗だから面白くない。そして、出版なら面白いに違いないと考えて、そこに専念しながら、そこでも筆者は退屈し、なかば人生に嫌気がさしていた。何もかもがつまらなかった。
  エロ出版は、好きな世界を活字で表現したいというマニアたちよりは、楽して儲けたい、と、そうした怠け者たちの集まる世界となりつつあった。たったひとつの、それもたかが八ページぐらいの企画を三日も四日もかけて話し合うのはバカバカしいことだと言われるようになった。告白手記につける偽名を決めるのに朝までケンカするような者たちはバカだと言われるようになっていた。
  何も考える必要などない。女性器の露出が激しいかどうかで売れるかどうかは決まるのだ、と、多くのエロ本関係者が考えていた。企画の内容よりは露出だったのだ。
  ワイセツな単語を効率よく並べることが売れる官能小説の書き方であるかのように言われるようになっていた。
  筆者はすっかり退屈しきっていた。そんな筆者がある重鎮に呼び出された。筆者にマニアというものとビジネスというものの両方を教えた男だった。彼はくだらないポルノではなく、きちんと思想のあるマニア雑誌を作ろうじゃないかと言った。素敵な誘いだった。素敵な誘いだったが、筆者は結果としてこの男を裏切ることになる。その原因がサイト鹿鳴館だったのだ。マニアである男を裏切り、筆者はマニアではない男との仕事に有頂天となるのだ。失敗だった。後悔している。しかし、仕方なかったのだ。サイト鹿鳴館を作った男には、筆者を幻惑させるに十分な魅力があったのだから。




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