中学生時代の卒業アルバムを開いた。そこには私がはじめて性器を見せ合った女の子がいる。
官能小説を書くことを生業とするようになってから、私は自分の小説に何度となく彼女を登場させている。彼女の名前を使うことで性的興奮を高めていたのだ。忘れるはずのない名前だった。
ところが、自分のクラスに彼女の名前はなかった。同級生だということを勘違いしているのかもしれないと他のクラスも探すが見つからない。クラスの女の子たちの顔を丹念に見つめ直した。何とか記憶は蘇る。それぞれの女の子についての記憶がある。私が性器を見せ合った女の子と親しかった別の女の子はすぐに見つかった。
他のクラスの女の子の顔も丹念に見つめ直してみる、さすがにそこには記憶にない顔も多い。そしてそこにも、彼女はいなかった。彼女の名前や顔、年齢を勘違いしているのか、それとも、そんな思い出そのものが、そもそも存在していないのか分からなくなった。同時に、あんなにも鮮明で、その後、何度も使った名前がなくなっているということは、他の自分の記憶も、けっこう違っているのではないかと恐くなった。
恐くなったが、それを確かめる方法については思いつかなかった。いや、もし、思いついてのそれは実行しなかったのではないだろうか。
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