江戸時代の終わりの頃、ある村の幼い女の子が子守として、江戸の豪商の家に雇われていた。
さて、女の子が夜中に厠に行こうとすると、女将さんの子供をあやす声が聞こえて来る。女の子は赤ちゃんがぐずったのに自分が気づかずに女将さんを起こしてしまったのだと思い、あわてて声のする女将さんの寝所を開けようとして、奇妙なものを見る。
女将さんがあやしていたのは、赤ちゃんではなく、老人だったのである。醜悪な身体の大きな老人が女将さんにしがみついているのだ。全裸におおきなオシメをつけていた。
女の子は怖くなって厠に行くのも忘れて部屋にもどった。
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女将さんが悪い妖怪にたぶらかされていると思ったからだ。赤ちゃんのふりをして女将さんの身体を弄ぶ妖怪、女の子は故郷に帰った後、そのように村の人たちに告げた。当時、江戸は魑魅魍魎の棲むところだと思われていた。
その噂はたちまち「子泣き爺」という妖怪話しとなって、江戸にまで伝わった。そして、幼児プレイマニアだった女将さんをも、たいそう怖がらせたという。
出典『妖怪は変態』山口師範著 鹿鳴館出版局
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