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【 事 例 】 |
(女性 ニ十七歳) |
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私はマゾヒストではないのだと思います。ただ、ノーマルでもないのです。なぜなら普通に愛されることの気恥ずかしさには耐えられないからなのです。それなら、いっそ鞭で叩かれ、苦痛に顔を歪ませ、その後で快楽を与えられたほうがいいと思っているのです。
ところが、あるSの男性とのプレイで、私は実は自分がマゾヒストではないのだと思ったことがあるのです。その男性とのプレイは誰とでもする普通のSMプレイでした。特別に変わったところもなく、また、特別にハードだというわけでもありませんでした。
私はいつもそうしていたように鞭の激しい苦痛の中で気を失いかけていたのです。その刹那、彼は私をギュッと抱いたのです。息苦しいほどきつく抱かれて私は苦痛と同時に全身がとろけるような快感を得たのです。
私が欲しかったのは苦痛ではなく、激しい鞭でもなく、この強い抱擁だったのだと、そのとき思いました。
ところが、その男性はその後には、二度とその行為をしてくれませんでした。そして、その他の男性も、そうした行為はしてくれないか、してくれたとしても、あの息もできないほどの強い抱擁ではありませんでした。
私は、あのときの快感を求めて激しい鞭に耐え、屈辱に身体を汚し、男性の性欲の捌け口となっているのです。私のはマゾヒズムではありません。だって、私が求めているのは痛みではなく抱擁なのですから。
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