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【 事 例 】 |
(女性 二十三歳) |
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最初はSMに興味があったのだと思います。縛られたい、鞭打たれたい、恥ずかしいことされたい、気持ちのいいこともしてもらいたい、そんなふうに想像していたのだと思います。
でも、小さなSMパーティで縛られた時に、私は自分が求めていたものはSMでも、緊縛でさえなく、これなんだと思ったのです。
数人の男女のいる中で私は全裸にされました。男の人の視線が私の胸や陰部の薄い毛に集まるのを感じました。女の人の視線が決して細くはないウエストや太股に集まるのも感じました。見られている、と、そう思いました。嫌らしい目、厳しい目、好意的な目、いろいろな目が私を見つめていました。
そして、私はていねいに、慎重に、優しく縛られていったのです。まるで人形のようでした。あるいは、これから舞台に出る女優さんのようでした。私は立ったまま何もしません。何もしない私が他人任せで変身していくのです。
快感でした。私の身体を這う縄と指、そして、集中する視線が、私の中心部を熱くしびれさせ、その熱いしびれは陰部から太股とおなか、背中やお尻、やがて全身に伝わりました。熱いしびれが脳に伝わると、私は幼い記憶をくすぐられて、とてもくすぐったい気持ちになりしました。赤ちゃんの私が頬に感じた大人の頬のくすぐったい感覚に似ていると思いました。そんな記憶なんかないのに、この感覚は確かに、あの時のものだって思ったんです。
Mなのかと尋ねられたら違うかもしれません。注目されたいだけなのかと尋ねられたら、それも違うかもしれません。縛られるだけでもだめなのです。注目されるだけでもだめなのです。注目されて鞭を打たれるとか、セックスするとか、それもだめなのです。
注目された中で縛られること、それだけが私の性なのです。その瞬間だけ、私は女になれるのです。
ただ、この性的嗜好のために、私は恋愛という感覚を喪失したように思うのです。それが寂しいのですが、もう、どうしようもありません。私は快楽を知ってしまったのですから。
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